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コラムコラム

絵画

フェルメール・ブルーの秘密とは?絵に使われた高価な青色の正体を解説2026/08/11

フェルメールブルーとは

17世紀オランダの画家ヨハネス・フェルメールの絵は、静かで写実的な空間表現と、光の巧みな描写で知られています。
なかでも、彼の作品を象徴するのが、吸い込まれるように深く鮮やかな青色です。
この記事では、フェルメールが愛用した特別な青色の正体に迫り、その原料や価値、そして彼独自の色彩技法について詳しく解説します。

観る者を魅了する「フェルメール・ブルー」とは何か?


「フェルメール・ブルー」とは、フェルメール作品で印象的に用いられる、鮮やかで深みのある青の通称です。
他の画家の青とは一線を画すその色合いは、単に美しいだけでなく、絵画の中に光と静寂、そして気品をもたらす効果があります。

この独特の青の表現は、高価な顔料を惜しみなく使用したことと、フェルメールの卓越した色彩技法の両方によって生み出されており、350年以上経った今もなお、世界中の人々を魅了し続けています。
フェルメールの代表作については「フェルメールの代表作ランキング」で詳しく紹介しています。

フェルメールが愛した青の正体は「天然ウルトラマリン」


水差しを持つ女(1662)
水差しを持つ女(1662)/出典:パブリックドメインQ

フェルメールが多用した特別な青色の正体は、「天然ウルトラマリン」という絵の具です。
この顔料は、宝石のラピスラズリを原料としており、その製造には大変な手間とコストがかかりました。

当時のヨーロッパでは最も高価な絵の具であり、その希少性から「海を越えてきた青」とも呼ばれていました。
フェルメールはこの貴重な青色を効果的に用いることで、作品に唯一無二の価値を与えたのです。


原料はアフガニスタンで産出される宝石「ラピスラズリ」


天然ウルトラマリン絵の具の唯一の原料は、古くから宝石として珍重されてきたラピスラズリです。
当時、良質なラピスラズリは現在のアフガニスタン北東部に位置するバダフシャーン地方でしか採掘されませんでした。

そこから遠く離れたオランダまで運ばれるため、輸送コストも莫大でした。
この希少な鉱石を砕き、不純物を取り除くという複雑な工程を経て、ようやく顔料として使用できるため、極めて貴重な絵の具だったのです。


当時、金と同等の価値があった非常に高価な顔料


天然ウルトラマリンは、17世紀当時、同じ重さの金と取引されるほど高価な絵の具でした
その理由は、原料であるラピスラズリの産地が極端に限られていたことと、精製に高度な技術と長い時間を要したためです。
多くの画家が使用をためらうなか、フェルメールはパトロンの支援を受け、この貴重な顔料を惜しげもなく使用しました。

このことが、彼の作品に特別な輝きと価値を与える一因となっています。

ただ塗るだけではない!光を巧みに表現するフェルメール独自の色彩技法


フェルメールの作品が放つ光の表現は、単に高価なウルトラマリンを使ったからというだけではありません。
彼は、その使い方に独自の工夫を凝らしていました。
他の色が塗られる部分の下塗りに青を忍ばせたり、物の影に青を加えたりすることで、画面全体に統一感と深みを生み出しています。

こうした卓越した色彩技法こそが、フェルメールを「光の魔術師」たらしめているのです。


下塗りに青を忍ばせて生み出す深みと光沢


フェルメールは、絵の具を直接キャンバスに塗るのではなく、下塗り段階で青の色を活用しました。
例えば、白色の壁を描く際に、下地に青の層を薄く塗っておくことで、上に重ねた白に透明感と深みを与えています。

この技法により、単なる白ではない、光を含んだような独特の質感が生まれます。
青の持つ色彩効果を熟知していたからこそ可能な、高度なテクニックといえるでしょう。


影の部分に青を用いて光を感じさせる表現方法


一般的に影は黒や茶色で描かれますが、フェルメールは影の中に青の色を効果的に取り入れました。
光が当たっている部分の反対側にできる影に青を用いることで、光の反射や大気の存在を感じさせ、空間にリアリティと明るさをもたらしています。

この技法は、特に白い壁や布の陰影を描く際に顕著に見られ、彼の作品における光の表現をより豊かにしています。

フェルメール・ブルーが際立つ代表的な作品3選


フェルメールが描いた絵の中でも、特にウルトラマリンの青が効果的に使われ、その魅力を存分に味わえる代表的な作品を3点紹介します。
これらの作品を通じて、彼がいかに青という色を巧みに操り、光や質感を表現したかを見ることができます。


『真珠の耳飾りの少女』のターバンに輝く鮮やかな青


真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女/1655)
真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女/1655)/出典:パブリックドメインQ

フェルメールの作品で最も有名な『真珠の耳飾りの少女』では、少女が頭に巻いているターバンに、鮮やかなウルトラマリンが贅沢に使用されています。
光が当たる部分の明るい青と、陰になる部分の深い青のコントラストが見事です。
この青いターバンが、暗い背景から少女の顔を際立たせ、作品全体に強い印象を与えています。


『牛乳を注ぐ女』の日常風景に溶け込む多彩な青


牛乳を注ぐ女(1660)
牛乳を注ぐ女(1660)/出典:パブリックドメインQ

『牛乳を注ぐ女』は、日常の一場面を描いた作品ですが、ここにも巧みに青が使われています。
女性が身に着けている分厚いエプロンの青い布地、テーブルクロスの一部、そして壁に掛けられた陶器のタイルなど、様々な箇所に青の顔料が見られます。

これらの青の配置が、穏やかな光に満ちた室内の雰囲気を巧みに表現しています。


『青衣の女』の衣服に見る静かで深みのある青の表現


青衣の女(1663)
青衣の女(1663)/出典:パブリックドメインQ

その名の通り、青い衣服をまとった女性が主役の作品です。
この絵画で使われている青は、他の作品に見られるような鮮やかさとは異なり、非常に落ち着いた深みのある色調が特徴です。
衣服のドレープによって生まれる陰影が、青の持つ静謐さを一層引き立てています。

光を柔らかく包み込むような青の表現は、この作品の静かな空気感を見事に作り上げています。

他の画家が使った青との違いとは


フェルメールのウルトラマリンブルーは、その原料の希少性から特別な存在でしたが、美術の歴史上では他の種類の青色顔料も重要な役割を果たしてきました。
特に、時代が下ると安価で大量生産が可能な化学合成の絵の具が登場し、画家たちの色彩表現に大きな変化をもたらしました。

葛飾北斎が浮世絵で用いた「ベロ藍(プルシアンブルー)」との比較


富嶽三十六景(葛飾北斎)
富嶽三十六景(葛飾北斎)/出典:パブリックドメインQ

日本の浮世絵師、葛飾北斎『富嶽三十六景』などで多用した鮮やかな青色は、「ベロ藍(プルシアンブルー)」という化学合成顔料です。
これは18世紀初頭にドイツで発明され、安価で入手しやすかったため、日本では木版画の摺り色として爆発的に普及しました。
ラピスラズリを原料とする高価な天然ウルトラマリンとは対照的に、科学の力で生み出されたこの絵の具は、より多くの人々が青色表現を楽しむきっかけを作りました。
富士山の絵画については「富士山の有名な絵画【決定版】」で詳しく紹介しています。


天然顔料から化学合成顔料へ、絵の具の歴史的な変化


フェルメールの時代は、鉱物や植物といった天然の原料から作られる顔料が主流でした。
しかし、18世紀以降の産業革命を経て、科学技術の発展により様々な色が化学的に合成できるようになります。
1828年にはフランスで人工のウルトラマリン(フレンチウルトラマリン)の製造法が確立され、かつては金と同等の価値があった青の絵の具が、安価に手に入るようになりました。

この変化は、画家たちの表現の幅を大きく広げることにつながりました。

フェルメールの「青」に関するよくある質問


ここでは、17世紀のオランダの画家ヨハネス・フェルメールが用いた青色について、多くの人が抱く疑問にお答えします。
彼の作品を象徴する特別な青の秘密や、他の色彩との関係性、日本での鑑賞機会など、よくある質問をまとめました。

Q1:フェルメール・ブルーはなぜ「金と同じくらい高価」と言われるのですか?


A:主な理由は、原料であるラピスラズリがアフガニスタンの一部地域でしか採れず、大変希少だったためです。
また、宝石を砕いて純粋な青い色素を取り出す精製工程が非常に複雑で手間がかかることも、その価値を金と同等にまで高める要因となりました。

Q2:フェルメールは青色以外に特徴的な色を使っていますか?


A:ヨハネス・フェルメールは「レモンイエロー」も巧みに使う画家として知られています
特に女性の衣服やカーテンなどにこの色を用い、窓から差し込む光の柔らかさや暖かみを表現しました。
青色との対比によって、画面に鮮やかさと落ち着きを両立させています。

Q3:日本でフェルメールの青が使われた作品を見ることはできますか?


A:常設でフェルメールの絵を展示している日本の美術館は限られていますが、世界中の美術館から作品が集まる特別展覧会で来日する機会があります。
過去にも『真珠の耳飾りの少女』などが公開されました。
最新の展覧会情報を確認することで、日本で青の傑作を鑑賞できる可能性があります。

まとめ


フェルメールの作品を彩る鮮やかな青色は、希少な宝石ラピスラズリを原料とする「天然ウルトラマリン」という高価な顔料によるものでした。
彼の絵画の魅力は単に高価な材料だけに依存するのではなく、下塗りや影に青を巧みに使う独自の色彩技法に支えられています。
こうした背景を知ることで、フェルメールの作品をより深く味わうことができるでしょう。

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