人間国宝
試行錯誤から生まれた釉裏金彩 吉田美統2017/05/01

釉裏金彩とは、陶磁器の素地に意匠に合わせて切った金箔を貼りつけ、これを焼き付けた上に、さらに釉薬を掛けて焼き上げる制作技法です。1961年に金沢の陶芸家、武田有恒が第8回日本伝統工芸展に出品した「沈金彩鉢」が、陶器における釉裏金彩として最も早く、翌年第9回同展に重要無形文化財「色絵磁器」の保持者加藤土師萌がこの技法による作品を発表しました。この加藤の作品に感銘を受け、その技法を徹底的に研究・制作し、日本で初めて「釉裏金彩」で重要無形文化財に指定された陶芸家が、石川県出身の吉田美統です。
窯元錦山窯に生まれました。高等学校在学中より、同窯の職人から九谷焼の陶芸技法を学びました。1951年昭和26年に錦山窯3代目を継ぎ、上絵付や金襴手の伝統的手法を学びました。
釉裏金彩に挑むようになった当初は、ごく薄い金箔から精細な文様を切り抜くことは困難でした。それもそのはず、当時は誰もが金箔を直線で切る技術しか持っていなかったので、金箔を全面に貼った上に色絵を施すか、幾何学模様の器が主流だったのです。しかし、吉田は紙で金箔を挟み込み、鋏も手の動きが直に伝わるドイツ製の医療用のものと使うことで、文様にあわせた自在な箔切りを可能にしました。また、金箔の厚さを3枚分のものや5枚分のものなどを特別に注文し、厚みの差によって生まれる釉裏金彩の新たな表現領域を広げました。それが可能だったのは、吉田の住む石川県の県都金沢が、国内の金箔の95%以上を生産する産地で、こうした注文に応える職人がいたことが幸いしました。
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