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コラムコラム

中国美術

国宝クラスの煎茶器も現存!中国最古の陶磁器窯【景徳鎮】2023/02/01

やきものの中で特に格調高く、世界的なシェアを獲得したのが中国を発祥とする景徳鎮です。
景徳鎮は時代と共に変化して発展。民窯や官窯が設置され、優れた技術を後世に残しました。
景徳鎮がもたらした影響は日本の有田焼などの焼き物にも及び、世界的な焼き物として現在も我々を惹きつけています。
景徳鎮の焼き物の特徴はどこにあったのか、どのような技法が使われていたのか。
景徳鎮についてみていきましょう。


白磁とコバルトのマリアージュ!最大最古の磁都・景徳鎮の魅力とは?


景徳鎮(市)は、中華人民共和国(以下、中国とする)の江西省北東部に位置する都市です。現在では「磁都」と言われ、中国最大の古窯としても知られています。

景徳鎮の歴史は、中国の南北朝時代(西暦420~589年)から始まりました。
同市では古い時代から陶土(陶器に適した土)を産出。交通の便が水陸ともに良好であったため、陶工たちが居住してするようになりました。
南朝・陳の至徳元(583)年には、景徳鎮から陳王朝に陶器が献上。唐代には陶工・唐玉が陶器を仮玉器(かりぎょくき)と称して唐王朝に献上して「陶窯」と称せられたとも伝わります。
当時の北朝は隋であり、のちに統一王朝となる隋から唐初期にかけて景徳鎮窯が文献上の歴史に登場していました。
考古学調査では9~10世紀(唐代末期から五代十国)に形跡が認められてきました。

景徳鎮では初期に特色が乏しい青磁や白磁を焼成。この当時は「昌南鎮」と称していました。景徳鎮と改称したのは、北宋の景徳年間(1004~1007年に)のことです。名前の通り、景徳鎮窯が台頭してくる時代でした。

特に北宋の青白磁(青みがかった白磁)は、饒玉(じょうぎょく:当時の景徳鎮は饒州に属していた)という美称で呼ばれ、最高級の品とされていました。

14世紀の元代後期にはコバルト顔料を使用した染付磁器が製作されました。白磁にコバルトという景徳鎮の特徴が形作られ、中国陶磁器の主要な位置を占めていきいます。

明代初めの永楽年間(1403~1424年)には明王朝によって景徳鎮に官窯が設置。専用工場「御器廠(ぎょきしょう)」によって国をあげての製作が行われていきました。
中国最後の王朝である清代の康煕19(1680)年にも官窯である御器廠が設置されており、多くの陶磁器製品を生産しています。
このときは既に、景徳窯の存在の浮沈そのものが、中国陶磁器界を左右するほどの存在感を持っていました。

清代の雍正・乾隆の時代には、景徳鎮は最盛期を迎えて人口が40万人を突破。ヨーロッパ各国で景徳鎮の陶磁器が愛用されています。
陶磁器の頂点であった景徳鎮ですが、清代末期には需要に対応するために大量生産に移行。そのため品質が低下して粗悪な品が多くなります。


陶磁器の技術の粋「青花」と「赤絵」


景徳鎮の陶磁器には「青花(せいか)」と「赤絵(あかえ)」という代表的な染付の技法があるので紹介させていただきます。

青花(青い文様を意味する)は、名前の通り青い色を出す技法です。
まずは素焼き前の白色の素地に呉須(酸化コバルトの絵の具)で絵付を施します。次いでガラス質の透明の釉薬をかけて焼成していく流れです。別名は釉裏青(ゆうりせい)ともいいます。
焼成前は灰青色をしていますが、焼成後は色が一変。鮮やかな青色を発現させることができます。
中国では唐代末期、あるいは北宋時代の陶磁器作品に青花の技法が用いられ始めたと伝わってきました。

一方の赤絵は、赤を基調とした上絵付のある技法です。
焼成された白磁に赤・緑・黄・紫・黒などの上絵の具を塗り、最後低い温度(700~850度)で焼き付けます。
景徳鎮窯で赤絵が施されたのは元代とされます。紅緑彩を白磁に施す作品も生まれ、明代にも多彩な作品が制作されています。
景徳鎮民窯の赤絵技法による作品は、日本の茶人が特に好んでいました。
日本の「古赤絵」は明代の正徳年間(1506~1521年)や嘉靖年間(1522~1566年)に、景徳鎮窯で製作された品です。



使用された茶道具が国宝クラス?景徳鎮の作品を紹介


景徳鎮窯で焼成された陶磁器の中で、特に評価されている品々を三つ挙げていきます。

最初に紹介するのが、明代の陶磁器「祥瑞蜜柑水指(しょんずいみかんみずさし)」です。
同作は明代末期の景徳鎮で製作。日本の茶人をターゲットとして焼かれた陶磁器作品でした。
素地は白色磁質胎で、胴部分の中ほどが張り出した扁平な水指です。
文様はコバルト顔料によって緻密に描写され、素地そのものも選び抜かれた質の高いものでした。

次に「青花花卉文方瓶(せいかかきもんほうへい)」を挙げます。
同作は清代初期に景徳鎮民窯で製作された磁器作品です。
黒みがかったコバルトで竹を頸部分に描写。四季の花である牡丹・菊・蓮・菊・梅を胴の四面に描かれています。
明末期と清初期には、青花に濃(だみ:絵付の線描きを広く塗る作業)が見られるのが特徴です。その特徴が同作にありありと見られます。

最後に「豆彩束蓮文鉢(とうさいそくれんもんはち)」を紹介します。
同作は清代の雍正年間(1723~1735年)に景徳鎮官窯で作成。豆彩(青花の輪郭線に彩色を重ねて施す)と言う技法を使用しています。
豆彩技法は明代の成化年間(1465~1487年)に景徳鎮で完成。清代の雍正年間に、同作のような格式と品質の高い作品が生み出されていきました。
ちなみに同作は、日本において塗蓋を添えられて水指に見立てられ、茶の湯の器として用いられています。


おわりに


景徳鎮のやきものは、中国の一地域にとどまったものでは終わりませんでした。国家的な保護を受け、あるいは必要な変化を受容して現代に至っています。
青花や赤絵の技法も基本的技術から大きく発展。陶磁器の歴史を変えて、その発展を支えていました。
あなたの周りにも景徳鎮の焼き物があるかもしれません。一度ご確認してみてはいかがでしょうか。


○参考文献

・陳舜臣『景徳鎮の旅 中国やきもの紀行』 講談社 1991年


○参考サイト

・「景徳鎮窯」Japan Knowledge HP
・「景徳鎮」コトバンクHP
・「赤絵」コトバンクHP
・「青花」コトバンクHP
・「祥瑞蜜柑水指」文化遺産オンラインHP
・「青花花卉文方瓶」文化遺産オンラインHP
・「豆彩束蓮文鉢」文化遺産オンラインHP

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