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骨董

鎧の部位名称を紹介 |日本・西洋甲冑の各パーツを分かりやすく解説2026/07/07

鎧の部位名称

日本の大鎧や当世具足、西洋のプレートアーマーなど、鎧の正確な部位名称を知ることは、イラスト制作や博物館での鑑賞を深めるために非常に有益です。
各パーツの役割や構造を理解すれば、防具としての機能性だけでなく、造形美の背景にある歴史的工夫にも気付くことができるでしょう。
この記事では、日本と西洋の甲冑を構成する部分ごとの名称について特徴をご紹介します。

鎧の部位名称を知れば創作や鑑賞がもっと楽しくなる


鎧の部位名称

甲冑の各パーツの名称は単なる呼び名ではなく、それぞれの部品がどんな役割で身を守り、どのように動くのかを理解する大切な手がかりになります。
構造の理屈を知れば、デザインを考える上で説得力のある装甲を描けるようにもなります。
博物館での展示鑑賞や歴史ドラマを観る際も、装飾の意図や部品の欠損状態まで把握できるため、作品の世界観をより深く表現することが可能になります。

【日本の鎧】主な種類と各部位の名称を解説


鎧の部位名称

日本の甲冑は、戦闘スタイルの変化に合わせて大きく進化を遂げていきました。
特に代表的なものが、馬上で弓を射る戦いに適した平安時代の「大鎧」と、集団戦や鉄砲の導入に対応した戦国時代の「当世具足」です。
時代ごとに異なるこれら二つの甲冑について深く取り上げることで、実戦でどのように役に立ってきたのか見ていきましょう。


平安〜鎌倉時代の主流「大鎧(おおよろい)」の部位名称


平安時代から鎌倉時代にかけて活躍した武将たちが着用していたのが、大鎧と呼ばれる重厚な甲冑です。
主に騎射戦を想定して作られており、正面からの矢を防ぐための工夫が随所に見られます。
全体のフォルムは箱型に近く、隙間を覆うための大きなパーツが多く用いられているのが特徴です。

煌びやかな威し糸や美しい金物で装飾されており、実用性だけでなく武将の権力や美意識を示す役割も担っていました。
当時の戦の主流が個人同士の一騎討ちであったため、個々の武力を誇示するような威風堂々たる姿をしているのも特徴的です。

頭部を守る「兜(かぶと)」の各部名称


兜は、頭頂部を覆う「鉢」を中心に構成される部位です。
鉄板を星と呼ばれる鋲で留めた「星兜」などが有名で、頑丈な作りを誇ります。
額部分には、威厳を示すための「鍬形」が装飾として取り付けられました。
首周りを保護するために鉢の周囲へ垂らした「錣」があり、両端を顔の横で折り返した部分を「吹返」と呼びます。

吹返は横から飛んでくる矢を防ぐ役割を持ち、表面に革を張って仕上げられます。
革の端は、しっかりと縫い合わせられており、装飾性と堅牢性を兼ね備えていました。
兜を頭に固定する「忍びの緒」により、激しい戦いでも脱落を防ぐ仕組みを持っています。

胴体を守る「胴(どう)」と「草摺(くさずり)」


大鎧の中心となる胴体部分は、前後と左側を連続した装甲で囲い、右側を「脇楯」という別の部品で塞ぐ構造を持っています。
胴の前面には「弦走韋」という滑らかな革が張られ、弓を射る際に弦が引っかからない工夫が施されました。
胴の下部から垂れ下がって下半身を保護するパーツが「草摺」です。

大鎧の草摺は四枚構成であり、馬上での動きを妨げないように作られていました。
胸の左右には「栴檀の板」と「鳩尾の板」という小さな盾が吊るされ、脇の隙間を補う役割を果たします。

肩から腕を守る「大袖(おおそで)」と「籠手(こて)」


両肩から二の腕にかけてを覆う平らで大きな防具を「大袖」と呼びます
飛んでくる矢を盾のように防ぐためのものであり、表面には鮮やかな威し糸が編み込まれ、非常に目立つ意匠が施されました。
腕部を保護する「籠手」は、筒状の布地に鉄板や鎖を縫い付けた構造を持っています

平安時代の大鎧は、弓を引く左腕の袖が邪魔にならないよう、左腕のみに籠手を着用する「片籠手」のスタイルが一般的でした。
弦を放つ際の動作を最優先に考えた設計となっており、実戦に即した非対称な装備が特徴的です。
装甲としての堅牢さと、武器を扱うための柔軟性を兼ね備えた工夫が見て取れます。

下半身を守る「佩楯(はいだて)」と「臑当(すねあて)」


下半身の防御を担う部位として、太ももから膝を覆う「佩楯」と、脛を保護する「臑当」が存在します。
佩楯は、板札を威して前掛けのような形に仕立てられた防具です。
騎馬戦が中心の時代には馬の胴体が盾となるため、大鎧における佩楯の使用頻度は低く、省略されることも少なくありませんでした。

一方の臑当は、筒状の鉄板や革を足に巻き付けて紐で縛る構造を持っています。
足元は機動力が求められるため、過度な装飾は省かれており、軽量で実用的な作りに特化しています。
歩兵戦が主流になるにつれ、これらの下半身装備もより強固なものへと発展を遂げました。


戦国時代に発展した「当世具足(とうせいぐそく)」の部位名称


戦国時代に入ると、鉄砲の伝来や集団戦の普及に伴い、甲冑にも大きな変革がもたらされました。
この時期に登場した新しい形式の鎧を「当世具足」と呼びます
大鎧が騎馬戦を前提としていたのに対し、当世具足は徒歩での戦いを想定して作られています。

軽量化と動きやすさを追求し、体にフィットする立体的な構造を取り入れているのが特徴です。
槍や薙刀、そして鉄砲といった新たな武器から身を守るため、鉄板の割合が増え、より実戦的で強固な防具へと進化しました。
各武将が戦場で自らの存在を誇示するため、奇抜で個性的な意匠が施されたことも当世具足の大きな魅力となっています。

個性が表れる「兜(かぶと)」と、顔を守る「面頬(めんぽお)」


当世具足の兜は「変わり兜」と呼ばれるほど多様化し、動物の角や毛、植物などをモチーフにした巨大な装飾が取り付けられました。
戦場で味方を指揮し、敵に威圧感を与えるための重要な役割を担っています。
同時に、顔面を保護する「面頬」という新たな防具が定着しました。

面頬は鉄や革で作られた仮面であり、鼻から下を覆う構造を持っています。
表面には威嚇のために険しい表情が彫り込まれ、口元には金箔などで牙や歯が表現されることもありました。
喉元の隙間を守る「垂」も付属しており、頭部全体の防御力を飛躍的に高めています。

防具としての機能性が向上した「胴(どう)」


当世具足の胴は、鉄砲の弾丸に対する防御力を強固にするため、複数の鉄板を鋲で留めたり、一枚の巨大な鉄板を打ち出したりして作られるようになりました。
仏像の胸部のように滑らかな表面を持つ「仏胴」など、継ぎ目を減らして強度を増した構造が主流となります。
重量を肩だけでなく腰にも分散させるよう設計されており、長時間の行軍でも疲労を軽減する工夫が凝らされています。

大鎧に見られた革張りは姿を消し、代わりに漆塗りや金箔押しによって防錆性と装飾性が高められました。
武士たちの命を守る要として、機能美を極めた堅牢な作りが特徴的です。

動きやすさを重視した「袖(そで)」と「籠手(こて)」


徒歩での激しい立ち回りが求められる当世具足では、腕周りの防具も大きく変化しました。
大鎧に見られた巨大な大袖は小型化し、肩関節の動きを阻害しない「当世袖」へと移行します。
盾としての役割よりも、機動力を優先した結果です。

腕全体を覆う「籠手」も、両腕に着用するスタイルが基本となりました。
鎖の間に細かな鉄板を縫い付けた構造により、刃物による斬撃から腕の関節や血管を効果的に守ります。
手の甲から指先までを覆う「手甲」も一体化されており、武器を握る手を保護しつつ、手首の滑らかなスナップを活かせるよう精密に仕立てられています。

多様な形状が生まれた「佩楯(はいだて)」と「臑当(すねあて)」


歩兵による白兵戦が激化すると、足元を狙う攻撃が増えたため、下半身の防具も著しい発展を遂げました。
「佩楯」は、太ももを保護するために布地へ小さな鉄板や鎖を縫い付けた構造へと進化しています。
正座がしやすいように中央で二股に分かれたものや、軽さを追求した鎖単体のものなど、用途に応じて様々な形状が考案されました。

「臑当」も、ふくらはぎ側まで回り込むような立体的な鉄板を用いるなど、防御範囲が拡大しています。
膝頭を保護するための六角形の鉄板を組み込んだ布製の膝当てが追加されるなど、機動力と防御力を高い次元で両立させています。

【西洋の鎧】プレートアーマーの各部位の名称を解説


鎧の部位名称

中世ヨーロッパの後期に完成形を迎えた西洋甲冑の代表格が「プレートアーマー(全身板金鎧)」です。
全身を鉄の板で覆うこの鎧は、関節部分まで隙間なく保護できるよう、人体の骨格に基づいた緻密な設計がなされています。
日本の甲冑が複数の素材を編み合わせているのに対し、一枚の鋼板を叩き出して作られているのが大きな違いです。

プレートアーマーを構成する主要なパーツの名称から、西洋独自の防具の全容を読み解きます。


頭部を守るヘルム(兜)とゴルゲット(喉当て)


西洋の兜は「ヘルム(Helmet)」と呼ばれ、頭部全体を包み込むような形状が特徴です。
顔面には「バイザー(Visor)」という可動式の面甲が取り付けられており、視界を確保するための細いスリットや、呼吸用の通気孔が開けられています。
非戦闘時にはバイザーを跳ね上げて素顔を見せることが可能です。

首と喉を守る防具は「ゴルゲット(Gorget)」と呼ばれます。
首回りをぐるりと囲む筒状の装甲であり、ヘルムとブレストプレートの隙間を埋める重要な役割を担う部分です。
刃物が首元へ滑り込むのを防ぐため、縁が反り返った形状になっているものが多く、急所を徹底的に保護する工夫が見られます。


胸部と背中を守るブレストプレートとバックプレート


胴体を防御する中核となるのが、前面を覆う「ブレストプレート」と背面を覆う「バックプレート」です。
これらは蝶番やレザーストラップで連結され、体を前後に挟み込むように装着されます。
ブレストプレートの中心には、敵の剣先や槍の穂先を受け流すための中央稜が設けられているのが一般的です。

腰から太ももの上部にかけては、「フォールド」という帯状の鉄板が何段にも重ねられており、前屈みになる動作を妨げない構造を持っています。
背中側にも同様の「キュレット」というパーツが付随し、腰回りの隙間を塞いでいます。


肩から指先までを覆うポールドロンやガントレット


腕周りの防御は、複数のパーツが関節の動きに合わせてスライドする複雑な仕組みを持っています。
肩を保護する巨大な装甲が「ポールドロン(Pauldron)」であり、首元や脇の下への攻撃を防ぐための隆起が設けられました。
二の腕を守る「ヴァンブレイス(Vambrace)」や肘を覆う「クーター(Couter)」を経て、手先へと繋がります。

手を保護する防具は「ガントレット(Gauntlet)」という名称です。
手の甲を分厚い鉄板で守りつつ、指の関節ごとに極小鉄板をリベットで繋ぎ合わせることで、剣の柄をしっかりと握り込める柔軟性を確保しています。
繊細な職人技が光る重要な部位といえます。


脚部全体を防御するクイスやサバトン


脚部の装甲も、歩行や乗馬の動作を妨げないように細かく分割されています。
太ももを覆う筒状のパーツが「クイス(Cuisse)」です。
膝関節を守る「ポレイン(Poleyn)」には、膝の横から攻撃が入るのを防ぐための扇状の羽が取り付けられています。

脛を保護する「グリーヴ(Greave)」は、ふくらはぎ側も金属板で覆う完全な筒状のものが主流でした。
足先を守る靴状の装甲が「サバトン(Sabaton)」です。
複数の薄い鉄板を重ね合わせて作られており、足首の曲げ伸ばしに追従する構造となっています。
時代や流行によって、つま先が尖った形状や、幅広の熊の手のような形状など、多彩なデザインが存在しました。

鎧の構造が分かる各パーツの役割


鎧の部位名称

甲冑は単に硬い素材を身にまとうだけでなく、人体の動きを妨げずに急所を守るという高度な設計思想に基づいて作られています
部位名称とあわせてその構造的な役割を理解することで、なぜその形をしているのかという合理的な理由も明らかになります。
日本や西洋の鎧がどのような機能的工夫によって成り立っているのか、防具としての本質的な役割に迫ります。


なぜ鎧は複数のパーツで構成されているのか


鎧が細かいパーツに分割されている最大の理由は、機動力の確保と重量の分散にあります。
人間の体は複雑な関節を持っており、全身を一枚の硬い素材で覆ってしまうと身動きが取れなくなります。
肩、肘、膝などの可動域に合わせてパーツを細分化し、それらを紐やリベットで連結することで、装甲の強度を保ちつつ関節の屈曲を可能にしているのです。

パーツを分けることで、戦闘中に破損した部分だけを交換・修理できるというメンテナンス性の高さも兼ね備えています。
部位ごとに適切な厚みや素材を変えることで、全体の総重量を抑え、長時間の戦闘に耐えうる実用的な防具が実現しました。


動きやすさを実現する「小札(こざね)」と「威し糸(おどしいと)」


日本の鎧の大きな特徴である「小札(こざね)」は、鉄や革で作られた小さな短冊状の板のことです。
この小札を少しずつ重ね合わせながら、漆を塗って強度を高めていきます。
これらの小札を上下に繋ぎ合わせるための紐が「威し糸(おどしいと)」です。

絹や革で作られた威し糸を交差させながら編み込むことで、堅牢な板が柔軟に曲がるようになります。
この構造により、着用者の体格に合わせて装甲がしなやかにフィットし、打撃の衝撃を糸の弾力で吸収・分散させることが可能です。
色鮮やかな威し糸は、部隊の識別や武将の美意識を表現するデザインとしての役割も併せ持っており、機能と装飾が見事に融合しています。


防御力を高める各部位の形状とその機能


西洋のプレートアーマーに見られる滑らかな曲面は、単なるデザインではなく、武器の威力を削ぐための合理的な形状です。
表面を丸く膨らませることで、敵の剣や槍の刃先が垂直に当たるのを防ぎ、攻撃を横へと受け流す「避弾経始」の役割を果たします。
日本の兜の鉢が丸みを帯びているのも同じ理由です。

日本の兜の吹返や西洋の膝当てのポレインにある扇状の出っ張りは、関節の隙間や顔面への攻撃を物理的に遮断するための障壁として機能します。
それぞれの部位が持つ独特の形状は、過去の戦いから得た教訓に基づいて計算し尽くされており、着用者の生存率を極限まで高めるための工夫が詰まっています。

鎧の部位名称に関するよくある質問


鎧の各部位の名称や構造について学んでいくと、実際の運用方法や創作への活かし方など、さらに細かな疑問が湧いてくるかもしれません。

Q1:イラストで鎧を描くときに注意すべき点は何ですか?


A:関節の可動域とパーツの重なり順を意識することが最も重要です。
鎧は中にいる人間の骨格に合わせて動くため、肘や膝の隙間がどう曲がるかを的確に捉え、上部の装甲が下部に覆い被さる構造を正確に描写します。

Q2:実際の鎧はどれくらいの重さがありましたか?


A:日本の当世具足で約10〜20kg、西洋のプレートアーマーで約20〜30kg程度です。
全身のベルトや紐で重量を分散させる構造になっており、実際は数字ほどの重さを感じず、着用したまま走ることも可能でした。

Q3:鎧を着るとき、その下には何を着ていたのですか?


A:鎧の擦れを防ぎ、打撃の衝撃を和らげるための専用の衣服を着用します。
日本では「鎧下着」と呼ばれる和装や袴を身につけ、西洋では「ギャンベゾン」という中綿が厚く詰められたキルティングの布製防具を着込んでいました。

まとめ


日本と西洋の甲冑は、それぞれ異なる戦術や歴史的背景に合わせて独自の進化を遂げてきました。
平安時代の大鎧から戦国時代の当世具足への変遷、西洋のプレートアーマーの緻密な構造まで、各パーツの部位名称には防具としての合理的な理由が込められています。
小さな金具や紐の一つにまで機能的な役割が与えられており、造形美と実用性が高い次元で融合している実態が明らかです。

名称と構造の仕組みを紐付けることで、博物館での実物鑑賞や歴史資料の読み解き、キャラクターデザインの作画資料として役立てることも可能です。
部位が持つ意味を正確に把握すると、甲冑という歴史的遺産についての理解が深まるでしょう。

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